通信でやりきる人、やめてしまう人(その③)
それからさらに1年経ち、2年経ち、本当にうちの大学に編入してくるのかな?と少しは考えたりもした。だが、少なくとも私が卒業するまでの間には、J君にお目にかかることはついになかった。
Hの話では、その後のJ君が気になっていたので連絡を取ろうとしたが、意気揚々と入った大学のほうもやる気があるのかないのか、親でもよく分からず、すっかり引きこもりになってしまったという。
それから時を経て、J君と同じ大学で学ぶことになるとは思いもしなかった。しかも英語の教員免許を取るために入った英文学専攻、まさにJ君と同じ学科である。私の母校はとにかく語学がウリの大学だったので、それと比べると意外なほど楽に感じた。Jは、これらの授業を受けながら何を思い、英文学が面白そうだと言ったのか…
思えば、現役の高校時代から1浪、2浪に至るまで、彼は受験した学部学科は、合格した1校を除いてすべて英語系だったように記憶している。教員の立場で生徒を見ていると、英語ができない、苦手だと言っている生徒の多くは、文学部志望でも英語系学科は避けている。要するに、学問として究めるには精神的な負担もきつい文学部で、さらに外国語となればなおさら厳しいだろうと、生徒なりに感じているからだろう。
英語学にしろ、英文学にしろ、実のところはかなり専門的で、それまでせいぜい受験勉強くらいしか英語の勉強をしてこなかった人であれば、それを面白いと感じるようになるのにはかなりの時間を要するものである。面白そう…J君は簡単にそう言ったが、彼のそれまでの英語の勉強量から言って、そのイメージどおりに英文学を捉えるようになるのは難しく、日大通信の卒業率10%台と言われる中、残りの90%程度の中に紛れてしまった可能性は、残念ながら高い。
通学制課程の場合は、友達ができたりサークルに入ったりなどで、ドロップアウトしそうな自分を救ってくれる拠り所が見つかるかもしれないが、通信、まして遠隔地に在住する方の場合は、友人との交流も難しい。
これから通信の英文学専攻に進もうとしている方で、教員免許などの資格取得を目的とするでもないのならば、決して簡単な勉強ではないということだけは頭に入れて、検討いただきたいと思う。