通信でやりきる人、やめてしまう人(その②)
J君が日大通信に入学してから1年後、我々は再び飲みに行った。聞けば、文理学部英文学専攻に入ったという。こいつ、そこまで英語が得意だったかな?という腑に落ちない気持ちで、何故英文なの?と聞いた時の答えが、先の「英文学が面白そうだから」だった。
もちろん、何に興味を持つか、それは自由である。「それで、面白い?」と聞くと、「まだわからない。」
私「…」
かくいう私とて、浪人を終えて大学に入った当時、漠然と英語が好きだったので英語系の学科を選んだという程度だったが、J君と私とが違ったのは、少なくとも受験勉強で得た知識量だった。
だがしかし、面白いかどうかさえまだわからないというJ君の口から、突飛な言葉がどんどん飛び出す。「来年度中に、◯◯の編入試験を狙うから、その時はよろしくな。」
「は??」
◯◯とは、当時通っていた私の大学の名前だ。これには私もさすがに聞き返した。「軽く言うけど、お前、見込みあるの?」
「そんなのやってみなきゃわからない」J君は真顔で返してくる。
「編入試験てさ、学力だけじゃないじゃん?面接で、志望動機とか、細かく聞かれるんじゃないの?ちゃんと勝算を持ってるのか?」
編入試験など考えたこともない私でさえ、この程度のことは知っている。むしろ面接試験が重要なはずだ。だが、彼はまたも「だからそんなのは、やってみなきゃわからんだろ?俺はやりたいことをやりたいんだよ。」
私「英文学が面白そうだから、で止まったままなのに、それをやりたいことって呼ぶのはおかしくないか?◯◯に入って、こういう研究がしたい、だから綿密な履修計画立てて、それで初めて編入試験じゃないの?」
J「そんなこと言ってたら、何もできない。」
私「逆だろう?そんないい加減なやり方では何もできない。」
話がヒートアップしかけたところで、一緒にいたHが声をかけた。「まあまあ、俺はJのやりたいことをやるのがいいと思う。」
所詮は他人事、と言ってしまえばその通りだが、Hの発言にも何だか納得いかないまま、久々の同級生飲みを終え、ボーリングに興じて家路についた。